編集後記 〜天下一武闘会までの道〜

1月7日に放送された「こんなところに日本人」を見ていただいた方ありがとうございました。

様々の方からメッセージをいただいておりまして、返事をまだできていない人…すみません。

放送から2週間くらい経ち…ようやく今までの日常に戻れたような感じがします。

 

実は今、自分はビザの関係により日本にいるので、「こんなところに、なんでネパールの古屋が?」みたいな変な誤解を生んでいて申し訳ないです。

「え?何?あの人って二人いるの?」ってすれ違いざまに小声で聞こえたのですが、190cmの謎の巨体が二人もいたら迷惑でしかないでしょう。

後1ヶ月後にはちゃんとネパールにいますので少々お待ちください。

編集後記

本には「あとがき」があるようにテレビ番組にも『編集後記』と言うべきものを書いてみてもいいのかと思うのです。

あの番組が完成されるまでに多くのスタッフたちが関わり作成されています。

その人たちに感謝の思いを記したいのと、やはり収まりきらない話について書くべきことがあったからです。

なので「編集後記」も読んでいただきたい。・・・と言うより、実は撮影後の方が、僕たちにとって、そしてエベレストの柔道にとって、大きな出来事がありました。

 

だから今、筆を走らせている自分がいるのです。

 

あの番組はもう去年の8月に収録されています。実は…そこから先の続きの物語があるのです。

「こんなところに日本人」とは

「こんなところに日本人」と言う番組は、タイトルの冠通り「こんなところ」つまりは日本の日常からはるか遠くの秘境に住んでいる人をピックアップした番組です。

しかしながら、実際に収録して、番組のディレクターさんたちから聞かれることは「住んでいる場所」が過酷だとか険しいとか、そのような地理的な質問はあまり聞かれることはありませんでした。

その代わりに聞かれるのが「どうして住んでいるのか?」そして「どのような人生を歩んできたのか?」との生きる姿勢ばかりを問われました。

 

僕自身はエベレストには年に何度も行っています。

 

しかし間違ってほしくないのは実際にそこでは生活していません。

 

ナレーションをしっかり聞くと分かりますが、普段はカトマンズに住んでいるとのことになっております。

番組上カトマンズでの活動の放送は憚れてしまうので、エベレスト柔道での活動を撮影してもらいました。

 

私の人生の道筋にはたくさんの人との出会いがありました。

 

1つは、高校時代の英語の先生との出会いであったり、

1つは大学の先輩の山口敬志さんとの出会いであったり、

1つはネパールの孤児院でお金を僕のカバンに入れてくれたディネスであり、、

1つはエベレストの柔道家カジ先生、、、

 

さらに続けよう。

 

1つは1歳の時から知っている我が愛娘のようなルビー

1つは子どもたちの柔道に懸命なダルマ先生

1つは、1つは、、、1つは、、、、1つは、、、、

 

あげればきりがなくなるくらいの人との出会いが何にも縁もゆかりもないネパールへ、

そしてエベレストにまで導いてくれたのだと思っております。(番組では3人としてまとめられていますが…)

 

その話しを聞くために、わざわざエベレストにまで登って来てくれた森口さんやスタッフさん、本当にありがとうございました。

冷蔵庫にお茶を取り入ったら終わってしまうわずかなテレビの放送時間でも、あれは本当に3日間13時間かけて、登っていますからね。

「ささやかな大きな嘘」

このような言葉のものが一つあるとするならば、実はあのエベレストの道場にはテレビで伝えきれていないものがありました。

大きな問題に直面していましたことまでは、テレビ番組での放送ではそこまで流されていません。

 

先輩山口らとともに建てた柔道場は2850メートルのモンジョ村。

しかしこの村にある学校は7年生(日本の小学校6年程度)までしかないんです。

8年生からの学校は3800メートルのクムジュン村にしかなく、子供達は中学生に上がるタイミングでみんなモンジョ村を離れてクムジュン村の寮で生活します。

 

なので、中学生に上がると、それと同時に柔道を辞めないといけなかったのです。

 

ここまで柔道をやってきて、実力もついてネパール国内の柔道大会でメダルまで取れるようになったのに…柔道が続けられない。

カジ先生や僕たちたちが嘆いているのではなく、主役であるエベレストの柔道をしている子供達が「柔道続けたいのに…」と悲しそうに言うのです。

 

標高3800mの村でも柔道を続けたい…

標高3800mのクムジュン村にはこの生徒数500人程のエベレスト地域で一番大きな学校があります。

そして、なんと奇跡的なことにクムジュンにはかつてカトマンズで柔道をやっていた柔道家がいるんです。

 

柔道をやりたいという子たちがいて、柔道を教えたいという先生がいて、あと足りないのは畳だけ。

 

畳さえあれば問題が解決するという状況なのですが、正直また畳を集めてまた送るってことには僕たちは二の足を踏んでいました。

 

ためらっていた理由は二つ。
1つは率直に言って大変。畳集めるのもしんどいし、また輸送費に数百万かかります。頂上についてもう歩きくたびれた足。しかし頂上まだもう上だったというのか…まだ歩けというか…

 

2つ目はこれ以上は支援でなく支配にならないか?という意識です。

 

自分たちが建てました!というのは達成感あるし、喜びもあるけど、これ以上、日本側だけで奮闘ばかりしていると、今度はエベレストの人たちが僕たちに何も言えなくなってしまう。

 

支援と支配、搾取と開発は紙一重の言葉です。

 

また新たな労力と多額の資金がかかるなら、他にやるべきことがあると判断し、時流が来るのを待っていようと思ったのです。

新たな夢「天下一武闘会」

一方で、モンジョ村に柔道場ができた柔道の先生のカジには新しい夢もできました。

クムジュン村の標高3800mの場所にも柔道場ができたら世界一高い場所で世界一強い人を決める「天下一武闘会」を開きたい!

大会を開いて、エベレストの子たちが世界一になる姿を見たい!という新しい夢です。

 

そして、この夢は「天下一武闘会」という世界一を目指すだけのような、ただの浪漫での想いではないんです。

 

実はエベレスト地域には「エベレストマラソン」という世界一過酷なマラソンが年に一度開催されます。

それに、その大会はかなり盛り上がるんです。エベレストマラソンのおかげで多くの人が訪れてくれ、エベレスト地域の大きな産業にもなるんです。

 

登山を目的として以外で大勢の人が訪れてくれ、人が主役になれるんです。

 

カジ先生はいつも、クムジュン村にも柔道場ができたら「天下一武闘会」を開催するんだ!と強く意気込んでいました。

この前の収録の時にもクムジュンの柔道場の見通しが何もないのに「天下一武闘会ツアー」のスケジュールを一人で考えているんです。

 

実はカットされているのですが収録でも次の夢として「天下一武闘会を開く!」とは豪語していたんです。

 

そして全ての収録が終わり。

いつか「天下一武闘会」叶ったらいいな…そんなことをカジさんも僕も森口さんも、ロケの人たちみんな思っていました。

ちゃんと神様は見てくれました。

なんと収録が終わった2週間後に畳が手に入ったのです!

 

IJF(国際柔道連盟)がくれた畳をエベレスト柔道のためにと寄贈してくれたんです。カジ先生もエベレストに神がいると興奮しました。

 

収録を終えてすぐに、こんな奇跡が起こったんです。カジさんがカメラの前で語った声はエベレストの神々にちゃんと聞こえたのでしょう。

 

畳が手に入ればここからは早いです!畳を運ぶための輸送費も、エベレスト地域の市長が動いてお金を出してくれました。

もうモンジョ村の柔道でしっかりメダルをとる結果を残してくれているので、もう現地の政府も動いてくれます。

足りない分はカジ先生自身で資金繰りをしてくれました。

 

そして…念願だったクムジュン村に畳が届いたのです。

これで標高3800mのクムジュン村でも柔道ができるのです。

今の時期は雪が積もっているのと、寒すぎるので柔道は開始していないのですが、 3月、4月春が来て温かくなった時には、富士山よりも高い、世界一高い場所で柔道の練習が開始されるんです。

 

カジ先生の夢だった「天下一武闘会」。

 

雲の上の話、夢のような話、と最初は思っていましたが…

来年?再来年?どちらにせよ目に見えるような近い未来で本当に実現が可能なところまできたんです。

 

試合会場に向かうまで、歩いて4日。そして世界一のエベレストの麓で大会をすると思うと胸が膨らみませんか?

 

2年前にFacebookに「エベレストを笑わせろ」という投稿をしました。

2年という月日が経って・・・
エベレスト…君も、きっと笑ってくれてますよね?

誰よりも輝かなくてはいけないもの

そして…今回のことで一番嬉しいのは

 

「もう僕たちの力が何も必要なかった」ということ。

 

次のクムジュン村での柔道場は、自分たちが動かなくても、エベレストに住んでいるカジ先生や現地の人たちで全てを実行できてしまったんです。

 

もう主役は僕たちではなくて、ここからは現地の人たちです。誰の力も借りずに彼らだけで動いているのですから。

 

愛着がある場所が手をかからなくなるのは寂しいものがあります。
ですが、どんなにいい活動でも外国人が主導で行うと、延々と資金繰りを続けないといけなく、財力と体力が持ちません。

現地の人が「やりたい!」という熱い想い。

それに寄り添う形で僕たちがいるべきなんです。
収録が終わった後2週間後に起こったこの奇跡。

 

世界一の場所で柔道ができれば…きっとエベレストの輝き以上にエベレストに住んでいる人たちが光り輝く街に変わっていくことでしょう。

 

これからはエベレストの目的は山だけではない。

 

 

人です!

 

エベレストに住んでいる人たちです!!


放送があって色んな人からメッセージが来たりしている中、エベレスト柔道キャプテンのナビンもとても喜んでおりました。

番組で「夢はオリンピックに出たい!」という事を言っていましたが、テレビ的に言わせている事は全くなく、ずっと昔からオリンピックに出たい!って自分から言っているんです。

 

最近は「センセイ、将来は柔道になりたい!柔道家じゃなくて、柔道になりたい!!」と。

久々にあらわれた柔道馬鹿です。

 

放送があってから、エベレスト登山に行った友達が道場や学校に行ってくれました。

柔道のおかげで、子供達がたくさんの人と触れ合え、学びがます環境になってくれる事…きっとエベレストの山々も願っていたことでしょう。

 

世界一は山だけでなく、エベレストに住んでいる人たちも。

 

今は寒い冬ですが、クムジュン村でも柔道が開始される、温かい春の訪れまで、、、日を数えて待つのが楽しくてしょうがないのです。

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